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難聴児の親御さんは常に「言葉に敏感」でなくてはなりません。お子さんが知っている言葉だけを投げかけていては、なかなか新しい言葉の獲得につながらないからです。

なないろ教室の個別レッスンでよく使用する絵本に「コンコンたまご」(岩崎書店)という本があります。タイトルの近くに「ママと赤ちゃんのたべもの絵本」と書かれていますので、小さなお子さんを対象としたものだとは思います。タイトルからもわかるように「たまご」の絵本です。この本を私が扱うときは、どのお子さんも大体「たまご」という言葉は自発的に出てきます。

ところが絵本の中で出てくる「めだまやき」「オムレツ」「卵焼き」などのメニュー名を言えないお子さんが多くいます。それだけではありません。絵本の内容には出てきませんが、絵をみれば、卵のパック」「卵の殻」「白身」「黄身」「生卵」いくらでも卵に関連する言葉を扱えるのです。「赤ちゃん」向きの絵本でも言葉はいくらでも広げられるのです。

「たまご」という言葉がお子さんから出てきた時点で、「では、たまごに関連する言葉は他に何があるだろう?」と親御さんは考え、生活の中で1つずつ言葉を積み重ねていかねばならないのです。生活の中では「たまご」だけでやり取りが成立するのかもしれませんが、そうではない言葉をあえて投げかけてみたり、意識的に使う必要があるのです。

 

この絵本を扱った後に、このような言葉の広げ方、レベルアップのさせ方の大切さを伝え、家庭学習を促したときに、絵本に出てきたものだけを扱うか、他にも卵に関連する言葉があるかな?」と親御さん自身が考え「ゆで卵」「錦糸卵」「入り卵(スクランブルエッグ)」などさらに言葉を意識的に扱うか、ゆでる」「焼く」「いためる」「かきまぜる」など動詞も合わせておさえていくか、などでお子さんが「たまご」という食べ物を通じて身につけていく言葉に大きな違いが出てきます。同じ題材を扱い、同じように指導をしても、親御さんがご家庭で扱うときに「言葉に敏感」になるかどうかがポイントなのです。

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ある程度、言葉が育ってきたお子さんであれば、新しい言葉や知らない言葉を親御さんが投げかけたときに「○○ってなあに?」と質問が返ってきます。このやり取りが新しい言葉の獲得へとつながります。意識的にお子さんが知らないであろう言葉を使ってみることも大切なのです。

 

例えば、家族4人分の何かを買わねばならないときに、

   一応、5個買っておいたんだ」 → 「一応ってなあに(どういう意味)?」

②    「念のため、5個買っておいたの」 → 「念のためってなあに?」

③    「本当は4個でいいんだけど、予備に1個多く買っておいたの」 → 「予備ってなあに?」

④    「家族4人だから4個でいいんだけど、2個ほしい人がいるかもしれないし、他の日に使うかもしれないから1個多く買っておいたの」 → 「ふーん、そうなんだ」

 

こんなやり取りをしたことがあります。わたしはお子さんが「一応」や「念のため」「予備」という言葉はおそらく知らないであろうということを想定してあえて投げかけています。そうすることで、お子さんは言葉や使い方をなんとなく学んでいくからです。もちろん1回のやり取りで上記の言葉をすぐに獲得するわけではありませんが、それでも、最初から④の投げかけをしてしまったら、一応」「念のため」「予備」といった言葉を聞く機会も学ぶ機会も逃してしまうのです。

 

質問を投げかける時も同じことです。何歳?」と聞かれると答えられても「いくつ?」と尋ねると年齢が答えられなかったり、数を数えてほしい時の質問の仕方もワンパターンになっていたり、いつも「いくつ?」「数えてみて」と投げかけなく、「1,2,3」と一緒に数えることしか行っていないと「いくつ?」「何個?」「何人?」「数えて」に対して数を数えることができなかったりします。数え方も「1,2,3」と数えられたらおしまいではありません。「1つ、2つ、3つ…」という数え方もあれば、人であれば「1人、2人、3人…」と数えます。言葉に敏感な親御さんは早い段階で数詞を取り入れ「何枚?」「何匹?」のような質問の投げかけや「1ぴき、2ひき、3びき」など数詞を含めた数え方をしているものです。

 

親御さんは時には、立ち止まって、「自分の言葉かけは足踏みしていないかな?」「きちんとわが子の成長、言葉の発達に合わせて自分の言葉かけをレベルアップさせられているかな?」と振り返ってみてくださいね。

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