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さて、聴こえとことばのコラム「夏休み特集」の続編です。

お子さんが読み書きができるようになり始めると、親御さんが主に仕上げる絵日記から、自分で書く(絵)日記へと発展していきます。今回は、我が家の経験なども少しご紹介していきたいと思います。

 

最近の小学校での絵日記事情は、学校、学年、担任によってもさまざまなようです。夏休み中に1枚だけが宿題になっているところもあれば、毎日の絵日記が宿題になっているところもあります。最近は「1行日記」なんていうのもはやっているようです。なないろ教室の言語聴覚士で、小学校2年生のお子さんをお持ちの先生は日記について

 

「日記を書かせて、はじめてこんなふうに覚え間違えていたことがあるんだというのに(親が)気づくし、漢字の使い方(誤り方)も分かる」

 

と言っていました。先生のお子さんのクラスでは、夏休みに1枚が宿題となっているようですが、宿題以外にもご家庭で日記に取り組まれているようです。

 

これは、難聴児にも同じことが言えます。話しているときは、あまり気にならないお子さんでも、いざ文字や日記を書かせると、聴こえの情報の少なさや発音の不明瞭さからくる、書きあやまりが多く見られます。

 

*清音と濁音間でのあやまり  (「”」のつくのが濁音、「。」がつくのが半濁音)

*促音「っ」・撥音「ん」のあやまり (省略など)

*長音「おとうさん」→「おとおさん」などのあやまり

*拗音(小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」がつく音)のあやまり

 

これらは「特殊音」と言われ、文字にすると難しさが増します。

 

それに加え、「きょうは」を「きょうわ」「学校へ」を「学校え」と書きあやまる、など通常であれば、「わ/wa/」や「え/e」と発音するものが文章内では「は」や「へ」と書かねばならないことがあるのです。それだけではありません。難聴児の場合は、助詞や構文のあやまりも見られるお子さんがいます。

こういったことをおさえていく上でも、毎日日記をつけることは、悪いことではありません。まずは、前コラムで書いたように、親子で話し合い、親御さんが経験をしっかり文にしていってあげることで、自分自身で書く際の参考になっていくでしょう。

 

文字の獲得は、個人差がありなんとも難しいのですが(※子育てコラム「文字の読み書き①②」も参考に!)、就学時に「平仮名が読める」「自分の名前が書ける」ということくらいは求められるのが一般的なようです。ただ、難聴児の場合は、発音のおさえや上記の特殊音への対応を考慮し、少し早めに取り入れてあげてもよいようにも思います。ただし、無理強いのないようにしてください。また、書き順には気を付けておいた方が良いでしょう。後から書き順をなおすことはとても大変なのです。

 

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さて、ここからは、我が家の「日記体験」について書きます。息子と日記をつけることで、STとしてではなく、母親としていろいろなことに気づかされました。

 

私には年長(5歳)の息子がいますが、毎日、日記をつけています。ちなみに年中のときには、読むことは可能でしたが、書くことについてはとても苦手意識をもっていました。書くことへの興味がまったくなかった上、筆圧も弱く、絵も苦手だったので、こちらもあえてやらせてはいませんでした。そのかわり、筆圧をつけさせるのによいであろうと、年中の時点では、たくさん絵を描かせていたように記憶しています(※お絵かきについては子育てコラムの「お絵かきにおけるハイハイ」も参考に!)

年長の4月の時点では自分の名前ですら私にしか読めないくらいでしたから、どうなることやら?と思っていましたが、5月くらいから大好きなポケモンの名前を書き始め、そのうち、「その日に遊んだ玩具あるいは遊び名を書く」ということを追加、その後「1行日記」へと移行し、今では、10マスの国語のノートを2ページくらいは書くようになりました。文字の下手さには、あまり触れず、とにかく上手に描けたときにほめるように心がけてはいましたが「書き順」だけには、それとなく口を出すようにしていています。

 

日記を書かせているといろいろなことに気づきます。

 

・「1行目」、「2行目」といった言葉を理解し、使うようになる。

・「日付」といった言葉を理解し、使うようになる。

・「1マスあける」といった言葉を理解し、使うようになる。

・「天気」や「気温」(他の地域の気温)などに興味を持つ。

・「~は」の「は」を「わ」とあやまって書いた後に自分で気づき始める。

・書き順をあやまった時に、時々自分で気づき「書き順をまちがえっちゃった」と言う。

・書き順を伝えるうちに、「縦」「横」「ななめ」「右から」「左から」「はねる」といった言葉を理解し、使うようになる。

・その日の経験を、自分の言葉で文にまとめることが難しい。

・感想を考えさせるのが難しい(すべて「たのしかったです」で終わりにしようとする)。

 

さいわい、息子は、毎日続いていることが途切れるのを嫌がる性格なので、比較的毎日書いてくれるのですが、とにかく、字を書くのが遅いので日記を書く間は、すべての家事を中断して45分前後は付き合います。毎日付き合う親の方が大変であると気づかされました…。いつも思うことですが、日々お子さんとしっかり向き合っている難聴児の親御さんには頭が下がる思いです。

息子が書き続けているのは、日記の間は、妹(3歳)ではなく自分が母親を独占できるという喜びからくるようにも思っています。それだけ、日記は話し合う場であるということにも気づかされました。単純な文は自分自身で考えられるのですが(例えば、「今日は○○で△をしました。」のような文)、伝えたいことがあればあるほどそれを自分自身で文にまとめることが難しいので、整頓してあげることが必要になるのです。娘もどうやら日記の時間は邪魔をしてはいけないと理解しており、いつもよりは、お利口にしていてくれます。「お兄ちゃんお勉強えらいね」「上手だね」などと言いながら、「○ちゃんもお勉強する~」と横でお絵かきやシール貼りをしています。そのため、息子と思う存分やり取りをしながら、一緒に文を考え、日記を仕上げることができるので、うれしいようです。毎日、必ず花丸で絵を描くのですが、「花丸タワー」「かたつむり花丸」などオリジナル花丸で大喜びする単純な息子です…。

 

また、娘は、日記を横で聞いているので、「きょうは、○○組で、△をしました。(まる)*ちゃんが、○○しました。たのしかったです。(まる)」のように、絵日記の文体で上手に自分の経験を語るようになりました。上にお兄ちゃん、お姉ちゃんがいる場合は、お兄ちゃん、お姉ちゃんと日記をやることで下の難聴さんがいろいろな言いまわしを覚えたり、経験を語るようになるかもしれません。

 

それにしても、感想や自分の気持ちを文にして書くということは本当に難しいものです。よく日記では、起承転結があるとよいといわれています。

 

・どこで?

・誰と?(誰が?)

・何をした?

・どうなった?

・まとめ(感想)

 

などになります。その中でも最後のまとめ…「感想」「気持ち」を記すことは、難しいように思います。

 

しかし、これまで出会った難聴児の中で、とてもかわいらしい絵日記を書いてくれたお子さんたちがいました。表現が豊かで、自分の気持ちを上手に日記に書けていて、毎回読むのが楽しみでした。多少、起承転結がない日記もありましたが、このような感情表現ができるお子さんは、素敵なお子さんに育っていくのだろうなぁと思います。あまり形式にこだわらず、お子さんが書きたいことを上手に引き出してあげることで感性が豊かになっていくのではないかと思います。

詳細について、なないろ会員のみなさんは、「遠隔支援サイト~SphiC~」の「遠隔支援概要」→「遠隔支援とは?」→「親指導用資料の提供」の中から詳しくは、「【言葉】気持ちの表現(中級~上級編)」にアクセスしてみてください。

 

いずれにしても、絵日記「日記」の取り組み方に1つの正解はないように思います。お子さんの字の習熟度だけでなく、感性や性格、いろいろなことを考慮し、楽しく取り組むことが大切なように思います。各ご家庭で、工夫をしながら、親子ともに苦痛にならないような取り組み方をしてみてください。それが難しいうちは、その日の経験をしっかり話し合うだけでも十分だと思います。

お手紙が好きなお子さんであれば、日記にこだわらず、心を込めたお手紙を書くことも「書く(描く)練習」につながります。お手紙については、聴こえと言葉のコラム『「想い」を届ける』も参考にしてみてください。

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