Archive for the ‘聴こえとことば’ Category

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4月

「ぼく・わたしは○○です!」

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        弟・長男        妹・姉・三女       妹・姉・次女        姉・長女

 

4月から年少組になった娘とよくこんな会話をします。娘の中ではちょっとしたブームのようです。

「○○はお母さんの~」      「むすめ!」

「○○はお兄ちゃんの~」     「いもうと!」

「○○はじいじとばあばの~」   「まご!」

「お兄ちゃんはお母さんの~」  「むすこ!」

「○○は息子じゃないの?」    「だって女の子だから娘だよ~(笑)」

「○○は4月から~」        「年少さん! いるか組だよ!」

 

そもそも、こんな会話をするようになったのは、娘に「大きなかぶ」を読んでいた時に、「まごってなあに?」という質問をされたときから始まったのですが、時々「大きなかぶ」では「まご」が「むすめ」になっているときもありますね。いずれにしても、ある一方向からしか言葉を覚えるのではなく、いろいろな視点や方向から言葉を覚えるというのは、意外と難しいものです。こういうことにも親御さんは敏感にならねばなりません。

 

「家族」や「親戚」について考えるとその関係性は混乱の極みです。最近では、家族や親戚の呼び方も「○○ちゃん」と友達のように呼んだり呼ばれたりしていることもあり、「○○ちゃんってだあれ?」と聞くと『お友達でもないし、誰だろう??』とやや答えに困るお子さんが多くいます。それでもご家庭できちんと説明をされている場合は、「ママの妹」「パパのお兄さん」と答えてくれることがあります。「叔父・伯父・○○おじさん」「叔母・伯母・○○おばさん」「いとこ」などはほとんど使われることもなくなりました。子供たちにとってその関係性をあらわすものが言葉でも薄れてきており、より理解が難しいのだと感じます。

 

以前もNHK教育TVの「ピタゴラスイッチ」という子供番組の「オノマトペの歌」を紹介したことがありましたが、同番組で「ぼくのおとうさん」(作詞:佐藤雅彦・内野真澄/作曲:栗田正巳/歌:栗田正巳)という歌を紹介しています。

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おとうさん、おとうさん、ぼくのおとうさん

会社へ行いくと 会社員

仕事をするとき 課長さん

食堂入ると お客さん

おとうさん、おとうさん、ぼくのおとうさん

歯医者にいくと 患者さん

歩いていると 通行人

おとうさん、おとうさん、ぼくのおとうさん

学校いけば 生徒さん

電車にのると 通勤客

 おとうさん、おとうさん、うちにかえると

「ただいま」

 ぼくのおとうさん

 

お父さんがいる場所や立場によって名前が変わっていく歌で「おもしろいなぁ」と思いながら聞いた記憶があります。

お父さんの呼び方自体も「パパ」「お父さん」「父」「父親」「おやじ」「お父さんの名前」など…いろいろですよね。

 

話しはそれますが、実は、そのような言葉って身近にたくさんあって、「前(まえ)」「後ろ(うしろ)」も自分から見て「前」であっても、それが相手から見て「前」とは限らなかったりします。だから、位置の言葉を使いこなすのは意外と難しいのです。

 

さらには、位置の言葉は、助詞によって変化したりもします。

「ママ前にいる」 (自分は後ろ

「ママ前にいる」 (自分は

 

日本語ってなんて難しいんでしょう!

 

新年度になり、お子さんのまわりの環境が変わったはずです。お子さんが自分のことを表す言葉で、これまでとは異なる言葉が新たに登場しているに違いありませんよ。ぜひ、見直してみてください♪

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13
8月

日記を書く!

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さて、聴こえとことばのコラム「夏休み特集」の続編です。

お子さんが読み書きができるようになり始めると、親御さんが主に仕上げる絵日記から、自分で書く(絵)日記へと発展していきます。今回は、我が家の経験なども少しご紹介していきたいと思います。

 

最近の小学校での絵日記事情は、学校、学年、担任によってもさまざまなようです。夏休み中に1枚だけが宿題になっているところもあれば、毎日の絵日記が宿題になっているところもあります。最近は「1行日記」なんていうのもはやっているようです。なないろ教室の言語聴覚士で、小学校2年生のお子さんをお持ちの先生は日記について

 

「日記を書かせて、はじめてこんなふうに覚え間違えていたことがあるんだというのに(親が)気づくし、漢字の使い方(誤り方)も分かる」

 

と言っていました。先生のお子さんのクラスでは、夏休みに1枚が宿題となっているようですが、宿題以外にもご家庭で日記に取り組まれているようです。

 

これは、難聴児にも同じことが言えます。話しているときは、あまり気にならないお子さんでも、いざ文字や日記を書かせると、聴こえの情報の少なさや発音の不明瞭さからくる、書きあやまりが多く見られます。

 

*清音と濁音間でのあやまり  (「”」のつくのが濁音、「。」がつくのが半濁音)

*促音「っ」・撥音「ん」のあやまり (省略など)

*長音「おとうさん」→「おとおさん」などのあやまり

*拗音(小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」がつく音)のあやまり

 

これらは「特殊音」と言われ、文字にすると難しさが増します。

 

それに加え、「きょうは」を「きょうわ」「学校へ」を「学校え」と書きあやまる、など通常であれば、「わ/wa/」や「え/e」と発音するものが文章内では「は」や「へ」と書かねばならないことがあるのです。それだけではありません。難聴児の場合は、助詞や構文のあやまりも見られるお子さんがいます。

こういったことをおさえていく上でも、毎日日記をつけることは、悪いことではありません。まずは、前コラムで書いたように、親子で話し合い、親御さんが経験をしっかり文にしていってあげることで、自分自身で書く際の参考になっていくでしょう。

 

文字の獲得は、個人差がありなんとも難しいのですが(※子育てコラム「文字の読み書き①②」も参考に!)、就学時に「平仮名が読める」「自分の名前が書ける」ということくらいは求められるのが一般的なようです。ただ、難聴児の場合は、発音のおさえや上記の特殊音への対応を考慮し、少し早めに取り入れてあげてもよいようにも思います。ただし、無理強いのないようにしてください。また、書き順には気を付けておいた方が良いでしょう。後から書き順をなおすことはとても大変なのです。

 

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さて、ここからは、我が家の「日記体験」について書きます。息子と日記をつけることで、STとしてではなく、母親としていろいろなことに気づかされました。

 

私には年長(5歳)の息子がいますが、毎日、日記をつけています。ちなみに年中のときには、読むことは可能でしたが、書くことについてはとても苦手意識をもっていました。書くことへの興味がまったくなかった上、筆圧も弱く、絵も苦手だったので、こちらもあえてやらせてはいませんでした。そのかわり、筆圧をつけさせるのによいであろうと、年中の時点では、たくさん絵を描かせていたように記憶しています(※お絵かきについては子育てコラムの「お絵かきにおけるハイハイ」も参考に!)

年長の4月の時点では自分の名前ですら私にしか読めないくらいでしたから、どうなることやら?と思っていましたが、5月くらいから大好きなポケモンの名前を書き始め、そのうち、「その日に遊んだ玩具あるいは遊び名を書く」ということを追加、その後「1行日記」へと移行し、今では、10マスの国語のノートを2ページくらいは書くようになりました。文字の下手さには、あまり触れず、とにかく上手に描けたときにほめるように心がけてはいましたが「書き順」だけには、それとなく口を出すようにしていています。

 

日記を書かせているといろいろなことに気づきます。

 

・「1行目」、「2行目」といった言葉を理解し、使うようになる。

・「日付」といった言葉を理解し、使うようになる。

・「1マスあける」といった言葉を理解し、使うようになる。

・「天気」や「気温」(他の地域の気温)などに興味を持つ。

・「~は」の「は」を「わ」とあやまって書いた後に自分で気づき始める。

・書き順をあやまった時に、時々自分で気づき「書き順をまちがえっちゃった」と言う。

・書き順を伝えるうちに、「縦」「横」「ななめ」「右から」「左から」「はねる」といった言葉を理解し、使うようになる。

・その日の経験を、自分の言葉で文にまとめることが難しい。

・感想を考えさせるのが難しい(すべて「たのしかったです」で終わりにしようとする)。

 

さいわい、息子は、毎日続いていることが途切れるのを嫌がる性格なので、比較的毎日書いてくれるのですが、とにかく、字を書くのが遅いので日記を書く間は、すべての家事を中断して45分前後は付き合います。毎日付き合う親の方が大変であると気づかされました…。いつも思うことですが、日々お子さんとしっかり向き合っている難聴児の親御さんには頭が下がる思いです。

息子が書き続けているのは、日記の間は、妹(3歳)ではなく自分が母親を独占できるという喜びからくるようにも思っています。それだけ、日記は話し合う場であるということにも気づかされました。単純な文は自分自身で考えられるのですが(例えば、「今日は○○で△をしました。」のような文)、伝えたいことがあればあるほどそれを自分自身で文にまとめることが難しいので、整頓してあげることが必要になるのです。娘もどうやら日記の時間は邪魔をしてはいけないと理解しており、いつもよりは、お利口にしていてくれます。「お兄ちゃんお勉強えらいね」「上手だね」などと言いながら、「○ちゃんもお勉強する~」と横でお絵かきやシール貼りをしています。そのため、息子と思う存分やり取りをしながら、一緒に文を考え、日記を仕上げることができるので、うれしいようです。毎日、必ず花丸で絵を描くのですが、「花丸タワー」「かたつむり花丸」などオリジナル花丸で大喜びする単純な息子です…。

 

また、娘は、日記を横で聞いているので、「きょうは、○○組で、△をしました。(まる)*ちゃんが、○○しました。たのしかったです。(まる)」のように、絵日記の文体で上手に自分の経験を語るようになりました。上にお兄ちゃん、お姉ちゃんがいる場合は、お兄ちゃん、お姉ちゃんと日記をやることで下の難聴さんがいろいろな言いまわしを覚えたり、経験を語るようになるかもしれません。

 

それにしても、感想や自分の気持ちを文にして書くということは本当に難しいものです。よく日記では、起承転結があるとよいといわれています。

 

・どこで?

・誰と?(誰が?)

・何をした?

・どうなった?

・まとめ(感想)

 

などになります。その中でも最後のまとめ…「感想」「気持ち」を記すことは、難しいように思います。

 

しかし、これまで出会った難聴児の中で、とてもかわいらしい絵日記を書いてくれたお子さんたちがいました。表現が豊かで、自分の気持ちを上手に日記に書けていて、毎回読むのが楽しみでした。多少、起承転結がない日記もありましたが、このような感情表現ができるお子さんは、素敵なお子さんに育っていくのだろうなぁと思います。あまり形式にこだわらず、お子さんが書きたいことを上手に引き出してあげることで感性が豊かになっていくのではないかと思います。

詳細について、なないろ会員のみなさんは、「遠隔支援サイト~SphiC~」の「遠隔支援概要」→「遠隔支援とは?」→「親指導用資料の提供」の中から詳しくは、「【言葉】気持ちの表現(中級~上級編)」にアクセスしてみてください。

 

いずれにしても、絵日記「日記」の取り組み方に1つの正解はないように思います。お子さんの字の習熟度だけでなく、感性や性格、いろいろなことを考慮し、楽しく取り組むことが大切なように思います。各ご家庭で、工夫をしながら、親子ともに苦痛にならないような取り組み方をしてみてください。それが難しいうちは、その日の経験をしっかり話し合うだけでも十分だと思います。

お手紙が好きなお子さんであれば、日記にこだわらず、心を込めたお手紙を書くことも「書く(描く)練習」につながります。お手紙については、聴こえと言葉のコラム『「想い」を届ける』も参考にしてみてください。

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13
8月

「絵日記」って必要なの?!

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今回の聴こえとことばコラムは、「夏休み特集」です。定番の絵日記について書きたいと思います。

難聴児療育において、絵日記」は切っても切れないものなのかもしれません。しかし、絵を描くのが苦手な親御さんが四苦八苦して仕上げるのであれば、だんだん絵日記に取り組むことを避けてしまうように思います。それではもったいない!

 

これだけ、電子媒体(スマートフォン・iPad・デジタルカメラなど)が出まわっている時代ですから、これらを上手に活用し、一緒に帰宅後ゆっくりと経験を語り合うこともできるでしょう。特に外や室内であっても騒々しいところでの言葉かけはどこまでお子さんの耳に届いているかわかりません。たとえFMを使っていたとしても、帰宅後に、新しく出会ったもの経験したことについて振り返り、語り合うことは大切なのではないかと思います。

 

絵日記としてまとめておくことは悪いことではありません。特に園に入ってからは、常に写真や動画を撮れる環境ではありません。親御さんがお子さんと園での出来事を振り返りながら、絵にしてあげることで、イメージしやすくなったり、会話だけでは、なかなか引き出せなかったことをうまく引き出せることがあります。その場合は、子供がいない時間帯に描くよりも多少汚くなっても、上手に描けなくても、話し合いながらタイムリーにその場で絵にしてあげる方が有効なように思います。

家族での特別な出来事を絵日記にまとめる際に、絵を描くのが苦手な親御さんの場合は、ちらしを切り取ったりパンフレットやチケットを貼ったりポイントとなる写真を貼り付ればそれだけでも絵日記として十分活用できるでしょう。

 

絵日記は、本来お子さんがいない時間に夜なべなどをして仕上げるものではなく、一緒に会話を楽しみながら仕上げるもののように思います。そうすることで、「今日はなにしたの?」といった質問にも気軽に答えられるようになるように思います。そのほかにも、

 

★ 経験を人に伝えること

★ さまざまな質問に答えること

★ 自らさまざまな質問をすること

★ 特別な経験の中での新しい言葉をおさえること

★ 日々の生活の流れをおさえること

 

などメリットがいっぱいです。これらの積み重ねが「読むこと」「書くこと」の力につながっていくように思います。(読み書きについては続編で!)

 

海外でも(絵)日記はExperience Boookと呼ばれ、存在します。

(株)コクレアのサイトに詳細が載っています。少し大きいお子さん向けのビデオで英語ではありますが、親子で絵日記に取り組む様子が分かるかと思います。

http://www.cochlear.com/wps/wcm/connect/au/home/support/rehabilitation-resources/early-intervention/my-experience-book

 

なないろ会員のみなさんは、是非、「遠隔支援サイト~SphiC~」の「遠隔支援概要」→「遠隔支援とは?」→「親指導用資料の提供」の中から

 

*「【絵日記】絵日記の描き方(初級編)」

*「【絵日記】絵日記の描き方(中級編)」

*「【絵日記】セラピー後の絵日記の扱い方」        などの資料もダウンロードしてみてくださいね。

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24
6月

言葉に敏感になろう!

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難聴児の親御さんは常に「言葉に敏感」でなくてはなりません。お子さんが知っている言葉だけを投げかけていては、なかなか新しい言葉の獲得につながらないからです。

なないろ教室の個別レッスンでよく使用する絵本に「コンコンたまご」(岩崎書店)という本があります。タイトルの近くに「ママと赤ちゃんのたべもの絵本」と書かれていますので、小さなお子さんを対象としたものだとは思います。タイトルからもわかるように「たまご」の絵本です。この本を私が扱うときは、どのお子さんも大体「たまご」という言葉は自発的に出てきます。

ところが絵本の中で出てくる「めだまやき」「オムレツ」「卵焼き」などのメニュー名を言えないお子さんが多くいます。それだけではありません。絵本の内容には出てきませんが、絵をみれば、卵のパック」「卵の殻」「白身」「黄身」「生卵」いくらでも卵に関連する言葉を扱えるのです。「赤ちゃん」向きの絵本でも言葉はいくらでも広げられるのです。

「たまご」という言葉がお子さんから出てきた時点で、「では、たまごに関連する言葉は他に何があるだろう?」と親御さんは考え、生活の中で1つずつ言葉を積み重ねていかねばならないのです。生活の中では「たまご」だけでやり取りが成立するのかもしれませんが、そうではない言葉をあえて投げかけてみたり、意識的に使う必要があるのです。

 

この絵本を扱った後に、このような言葉の広げ方、レベルアップのさせ方の大切さを伝え、家庭学習を促したときに、絵本に出てきたものだけを扱うか、他にも卵に関連する言葉があるかな?」と親御さん自身が考え「ゆで卵」「錦糸卵」「入り卵(スクランブルエッグ)」などさらに言葉を意識的に扱うか、ゆでる」「焼く」「いためる」「かきまぜる」など動詞も合わせておさえていくか、などでお子さんが「たまご」という食べ物を通じて身につけていく言葉に大きな違いが出てきます。同じ題材を扱い、同じように指導をしても、親御さんがご家庭で扱うときに「言葉に敏感」になるかどうかがポイントなのです。

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ある程度、言葉が育ってきたお子さんであれば、新しい言葉や知らない言葉を親御さんが投げかけたときに「○○ってなあに?」と質問が返ってきます。このやり取りが新しい言葉の獲得へとつながります。意識的にお子さんが知らないであろう言葉を使ってみることも大切なのです。

 

例えば、家族4人分の何かを買わねばならないときに、

   一応、5個買っておいたんだ」 → 「一応ってなあに(どういう意味)?」

②    「念のため、5個買っておいたの」 → 「念のためってなあに?」

③    「本当は4個でいいんだけど、予備に1個多く買っておいたの」 → 「予備ってなあに?」

④    「家族4人だから4個でいいんだけど、2個ほしい人がいるかもしれないし、他の日に使うかもしれないから1個多く買っておいたの」 → 「ふーん、そうなんだ」

 

こんなやり取りをしたことがあります。わたしはお子さんが「一応」や「念のため」「予備」という言葉はおそらく知らないであろうということを想定してあえて投げかけています。そうすることで、お子さんは言葉や使い方をなんとなく学んでいくからです。もちろん1回のやり取りで上記の言葉をすぐに獲得するわけではありませんが、それでも、最初から④の投げかけをしてしまったら、一応」「念のため」「予備」といった言葉を聞く機会も学ぶ機会も逃してしまうのです。

 

質問を投げかける時も同じことです。何歳?」と聞かれると答えられても「いくつ?」と尋ねると年齢が答えられなかったり、数を数えてほしい時の質問の仕方もワンパターンになっていたり、いつも「いくつ?」「数えてみて」と投げかけなく、「1,2,3」と一緒に数えることしか行っていないと「いくつ?」「何個?」「何人?」「数えて」に対して数を数えることができなかったりします。数え方も「1,2,3」と数えられたらおしまいではありません。「1つ、2つ、3つ…」という数え方もあれば、人であれば「1人、2人、3人…」と数えます。言葉に敏感な親御さんは早い段階で数詞を取り入れ「何枚?」「何匹?」のような質問の投げかけや「1ぴき、2ひき、3びき」など数詞を含めた数え方をしているものです。

 

親御さんは時には、立ち止まって、「自分の言葉かけは足踏みしていないかな?」「きちんとわが子の成長、言葉の発達に合わせて自分の言葉かけをレベルアップさせられているかな?」と振り返ってみてくださいね。

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3
4月

「おぼえる」ということ

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なないろ教室の個別レッスンでは、自然なやりとり、遊び、関わりを大事にしていますが、時には「おぼえる(覚える・憶える)」ということも行います。

 

年末年始には、何人かのお子さんに「干支」を扱いました。その中で、親御さんに「ね・うし・とら・う・たつ・み・うま・ひつじ・さる・とり・いぬ・い」と何も見ずに言ってもらうと、それを見聞きしていたお子さんは、「すごい!」と憧れを抱き、次のレッスンの時にはお子さんたちが自ら覚えて元気に発表してくれました。これも「おぼえる」です。

 

「なないろ教室」の階段には、「1ねんのうた」の歌詞が月ごとに1月から12月まで12枚貼ってあります。この絵が大好きなお子さんがいて、最初は、描いてある絵を親子で話し合いながら階段をのぼってきていました。親御さんからメロディを聞かれたのでお伝えすると、翌週には「♪おめでとう 1月 ♪つもるゆき 2月 ♪ひなまつり 3月…」と階段をのぼりながら歌ってくれました。これも「おぼえる」です。先日は降りるときに「♪クリスマス12月 ♪きくのはな 11月  ♪あおいそら 10月…」とリバースバージョンを歌ったそうです。まさに楽しく「おぼえる」です。

 

「おぼえる」というと

何かを暗記したり、暗唱したり、記憶したり、と勉強的なことを思い浮かべるかもしれません。もちろん、それらを行うこともあります。

しかし、子どもたちは、園の中でも実はおぼえなくてはならないことが山ほどあるのです。

少し、思い出してみましょう。

 

・朝の会…お当番さんのご挨拶

・歌…朝のお歌・お食事のお歌・おかえりのお歌

・行事…はじまりの挨拶(年長さんなどが行うことがあります)

・発表会…劇あそびのセリフ・挨拶

                                   など

これらの積み重ねが就学後の「日直」になったときにお話することであったり、「校歌」をおぼえて歌うことであったり、生徒会や放送係などが決まった言葉を大きな集団に向けて話すことなどにつながっていきます。

高校生や大学生がアルバイトをする際も、ガソリンスタンドでもファーストフードでもお客さまへの接待用語は決まっており、覚えなくてはなりません。社会人になっても、プレゼンテーションや会議などでおぼえて言わなくてはいけないことなどがたくさんあります。

 

そういう意味でも長い一生の中で「おぼえる」ということをさけて通ることはできません。

 

先日、息子の保育参加に行くと、遊びの中でこんな歌が聞こえてきました。

 

♪ おにごっこする人この指とまれ はーやくしないと 消えちゃうぞ

まだまだ消えない まだ消えない ろうそく1本 消―えた

あとから来る人 知―らんぺっぺ ♪

 

そういえば、息子が家で私や娘を遊びに誘うときにも歌っていたなぁと思いだしました。子どもたちは、こんなことも自然に「おぼえる」のです。

 

時には、難聴児にとって騒がしい園の中で、朝の会のご挨拶やお歌などを聴こえだけでおぼえてくることが難しいこともあります。そんな時は、親御さんなりに園とうまく連携を取ってご家庭でフォローをすることが必要かもしれません。

しかし、遊びの中でのことは、お子さん自身が自発的にお友達の言っていることを「おぼえたい」「知りたい」「一緒に言いたい」という気持ちを抱くことが、「おぼえる」ことにつながるようにも思います。

そんな気持ちを上手に育てていきたいなぁと思いながら、楽しい「おぼえる」をレッスン中には親子にお伝えしています。

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28
11月

ゲームを楽しもう!

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なないろの個別レッスンでは、カードや玩具を用いたゲームを行います。

かるた取り、トランプ、神経衰弱(絵合わせ)、黒ひげ危機一髪…、大きいお子さんになるとUNOやオセロ、すごろくなどを行うこともあります。

 

ゲーム「社会性」を育てていくうえでも大切な遊びの1つと考えています。会性」とは言葉を換えると「人とかかわる力」であり、『お子さんの育ち』を見るときに大切な1つの側面と言えます。幼稚園や学校だけでなく、大人になり社会に出ていく上でも「社会性=人とかかわる力」はとても大切です。

『お子さんの育ち』を4つの側面であらわしてみましょう。

 

1)運動   体全体を動かす、手指など細かい部分を動かす

2)認知   目で見て理解する、考える、覚える、目の前にない事をイメージする

3)言語   聴いて理解する、話す、ことばで考える、覚える

4)社会性  人に興味を持つ、相手の気持ちを想像する、応答する、共感する

 

たとえば、ゲームの中で「神経衰弱」を例にとると

 

1)運動  カードをめくる・同じカードを取って、そろえる

2)認知  同じカードをみつけられる・記憶する

3)言語  「○○の番」「勝った・負けた」「多い・少ない」「同じ・違う」「めくる」「ひっくり返す」などゲームに関連する言葉がわかる

4)社会性  順番や勝ち負けが分かる・ルールを理解し、受け入れる・自分の番だけでなく相手の番も見たり、応援したりして楽しめる・負けても次がんばろうと思える

 

と言えるのではないかと思います。言語指導ではついつい親御さんは「言葉」にだけとらわれがちになりますが、2)認知や4)社会性も「お子さんの育ち」の大切な側面となります。小さいうちから楽しくいろいろなゲームに触れていきたいですね。

 

今回は小さいお子さんが遊べるトランプ遊びを紹介します。

 

①  黒 どっち?

【遊び方】

カードを持っている人がカードを見せずに「だと思う?」「だと思う?」と聞き、色を言い当てたら、カードをもらえるという単純なゲームです。1人ずつ聞いていく場合は、カードを手渡し、全員一斉に聞く場合は、当たった人全員におはじきを渡すなどして、多くカードやおはじきをもらった人が勝ちというゲームです。

 

同じ色、違う色が分かっていれば、小さいお子さんであってもトランプを用いて楽しめるゲームです。まだ「赤」「黒」という言葉が分かっていないお子さんは、誰かとチームになったり、色カードの提示などを工夫することで色名の模倣を誘ったり、「同じ」「違う」「やったー」「ざんねん」などのやり取りを楽しめます。

 

②  ならべ

【遊び方】

各マークの「A」を机に置いて、そのまわりに同じマークのカードをまるくお花のように並べていくゲームです。最初は数を減らして行うと良いでしょう。特に勝ち負けはありません。

 

同じマーク、違うマークが分かっていれば「赤黒どっち?」同様に楽しめるゲームですが、トランプのマークは似ているので、それを見分けたり、手持ちのカードから同じマークを探すのが難しいことがあります。トランプのマークを繰り返し聞かせながら順番にカードを出すことを楽しみましょう。

 

③その他

*同じ数字が分かるようになったら、 「ババ抜き」

*数字を1-10まで並べられるようになったら、「七ならべ」(絵札を抜かして)     など

 

※トランプ遊びだといろいろなご家族が家庭療育として参加できる良いきっかけになると思います。

※年末年始、ご親戚で集まることも多いかと思います。カルタや福笑い、すごろくなどお正月ならではのゲームも是非楽しんでみてください。

  かごめかごめ・ハンカチ落とし・花一もんめ、なども楽しみましょう♪

 

★なないろ会員のみなさんは、是非、「遠隔支援サイト~SphiC~」の「遠隔支援概要」→「遠隔支援とは?」→「親指導用資料の提供」の中から「気持ちの表現」という資料もダウンロードしてみてくださいね。「社会性=人とかかわる力」と関連する内容が含まれています。

★なないろ会員のみなさんは、「なないろブランド」→「なないろ教材」→「アンパンマンチップ入れ」でチップの作り方や遊び方(ステップ2)もみてくださいね。

 

          

17
10月

「想い」を届ける

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なないろの個別レッスンでは、よく「郵便ごっこ」をします。

 

お手紙を書く→封筒に入れる→切手(シール)を貼る→ポストに入れる→郵便車で集める→動物さんたちの家に配る→動物さんたちが喜んでお手紙を読む

楽しく「郵便ごっこ」をすることで、このような郵便屋さんの流れ「封筒」「お手紙」「切手」「(郵便)ポスト」「郵便車」「郵便局」さまざまな郵便関連の言葉をおさえるきっかけになります。

 

では、お手紙はどうして書くのでしょうか?もちろん必要な書類を送ることもあるかもしれません。開けてみたら督促状~なんてこともあるかもしれません(>_<)

でも、やはり、「想い」を書いて届けるためなのではないかと思うのです。

 

実は、この「郵便ごっこ」をレッスンで扱ったあとに3通もお手紙をくださった方がいます。これまでも郵便ごっこのあとにお手紙をくださった方は多くいらっしゃいますが、3通も立て続けにくださったのはこの方が初めてです。それも1通目は暑中見舞いのハガキを「なないろ」宛てに、2通目は小包と一緒に、3通目は封書で私の自宅に届きました。

 

きっと「ハガキ」「小包」「封筒」「切手」もすべて経験を通しておさえたかったのだろうなぁと思い、関心してしまいました。そして封筒には、ゆうびんばんごう」など説明と思われる言葉、そして住所も私の名前もすべて平仮名で書いてあり、きっとお話をしながら宛先を書いたのだろうなぁと想像できました。切手も20円切手が4枚も貼ってあって、一緒に貼ったんだろうなぁ~と受け取ったときに何だかとても胸が熱くなりました。確かにこの親御さんは、さまざまな言葉をおさえるために送ったのかもしれません。

でも、お子さんのお絵かきやお手紙と一緒にきちんと親御さんの「想い」「感謝の気持ち」「これからも宜しくお願いします」というご挨拶のお手紙も同封されていました。きっとお子さんはそれをきちんと見ているのだろうなぁと思います。

 

ちなみに、小包は私が不在のときに届いたので、翌週のレッスンではしっかり「不在連絡票」についてお話できました。

  想い気持ちを伝えることを大切にしていきたいですね☆

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★ちなみに、先日、講演させていただいた声援隊主催の「きっともっとずっと4:おうちでインテ」にご参加くださった皆様への想いは「お知らせ」→「講習会」をクリックするとのぞけますよ♪

 

★なないろ会員のみなさんは、是非、「遠隔支援サイト~SphiC~」の「遠隔支援概要」→「遠隔支援とは?」→「親指導用資料の提供」の中から「気持ちの表現」という資料もダウンロードしてみてくださいね。

★なないろ会員のみなさんは、「なないろブランド」→「なないろ教材」→「郵便ポストと郵便車」で郵便ポストや郵便車の作り方や遊び方もみてくださいね。

5
6月

「歌」ってステキ☆

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「難聴児は歌を楽しめないのでは…」なんて思っていませんか?または、歌を歌うのはグループ活動でだけ」なんて、思っていませんか?

 

なないろの個別レッスンではよく歌を歌います。子どもが飾ってある「こいのぼり」に気づき、指さしたら一緒に♪こいのぼり♪を歌ったり、お花のシールを貼りながら♪さいたさいた♪♪チューリップたんぽぽ♪を歌ったり、絵本で「かえる」が出てきたら♪かえるの歌♪を歌ったり、レッスンの流れで関連する歌があればどんどん歌います。お片付けのときは♪おっかたづけ~おっかたづけ~、さあさ、○ちゃんはおっかたづけ~♪とママも先生も子供も歌いながらお片付けをします。

 

もちろん、グループレッスンで扱ったステキな歌があれば、個別レッスンでも歌います。はさみで紙を切るときは、♪ジョキジョキジョキジョキ、はさみで切るよ、ジョキジョキジョキジョキはさみで切るよ♪、一緒にお顔を描きながら、お顔を描いて~、お鼻はまんなか~、おめめは2つ、まゆげも2つ、お耳を描いて、お口はにっこり、○ちゃんのできあがり♪(きらきら星のメロディで)など。これらのオリジナル歌は、昨年度グループを担当してくださっていた先生の直伝ですが、自分の動作と合わせて聞く歌は耳に残り、子ども達が自然と口ずさむようになります。

 

 

どうすれば歌が好きな子になるのでしょうか?

 

それは、いたって簡単なこと、家でたくさん聞けばいいのです。親御さんがたくさんえばいいのです。歩きながら絵本を読みながら遊びながら、「ながら、ながら」のお歌づくしです。歌の一部のフレーズだってかまいません。親御さんが歌詞を間違えても、音痴でもそんな小さなことは気にしない、気にしない。子供にとって歌ってリズミカルで何だか楽しいのです。お母さんの声って心地がいいな~、お父さんの声ってなんだかお母さんとちがうな~。そんなことを体験するきっかけにもなります。

童謡のCDや時にはNHKの子ども番組を見るのもいいでしょう。小さいうちから、たくさんの歌に触れていてほしいと思います。

 

そんなことを繰り返しているうちに、しっかり最初から最後まで歌える歌ができたら、それはお子さんの自信につながります。「ねー、ねー、聞いて~、わたしこの歌一人で歌えるもん!」と自分からその歌に関連するものを目にすると歌い始めたりします。

 

歌の中でもさまざまなやり取りを楽しめますので、いくつかご紹介したいと思います。

 

【まねっこを楽しむ】

♪こぶたぬきつねこ♪

親御さんとお子さんが交互に歌えます。名詞も動物の鳴き声(オノマトペ)も両方楽しめますよ!

♪こぶた(ブーブブー)  ♪こぶた(ブーブブー)

♪たぬき(ポンポコポン) ♪たぬき(ポンポコポン)

♪きつね(コンコン)   ♪きつね(コンコン)

♪ねこ(ニャーオ)    ♪ねこ(ニャーオ)

 

【やり取り(質問)を楽しむ】

♪あなたのお名前は?♪

「お名前はなあに?」の質問に答えることをお歌の中で楽しく扱えます。

♪あーなたのお名前は?   ○です。

♪あーなたのお名前は?   ○です。

♪あーなたのお名前は?   ○です。

♪あら、素敵なお名前ね~(あら―、上手に言えたわね~)

 

♪どんな色が好き?♪

色やお絵かきが大好きなお子さんが楽しめるのでは~?

♪どんな色が好き?      赤! (好きな色を言う)

♪赤い色が好き、一番先になくなるの、赤いクレヨン。

 

【仲間集めを楽しむ】

♪やおやのお店♪

八百屋さんに売っているものを言っていきます。品物名を真似っこすることを楽しんでもいいですし、何が売っているかを一緒に考えることもできますよ。

♪やーおやのお店にならんだ しーなもの見てごらん

♪よく見てごらん、考えてごらん

♪とまと    ♪とまと

♪だいこん   ♪だいこん

♪きゅうり   ♪きゅうり   あー、 あー

 

★他にも山ほどあるので、紹介しきれません!!

なないろ会員のみなさんは、是非、「遠隔支援サイト~SphiC~」の「遠隔支援概要」→「遠隔支援とは?」→「親指導用資料の提供」の中から「歌の紹介」という資料をダウンロードしてみてくださいね。

17
4月

オノマトペ

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 【ぶら~ん】 【ぎゅっ】     【ぎっこん ばったん】

 

オノマトペとは、音や様子を表す「トントン」「リンリン」などの擬音語・擬態語のことをいいます。

 

NHK教育TVの「ピタゴラスイッチ」という子供番組では「オノマトペの歌」(作詞:内野真澄・うえ田みお/作曲:栗田正巳/歌:栗田正巳)というかわいらしい歌を紹介していますが、まさにすべての歌詞がオノマトペです。

 

ゴロゴロゴロゴロ (積み木を荷台に乗せ引っ張る音)

トンカトントントン (トンカチで何かを作る音)

エッヘン。 (上手にできて誇らしげな様子)

トコトコトコ (歩く音)

ガラガラガラガラ (窓を開ける音)

ニャ~ (窓を開けると猫がいる)

スッテン! (猫の鳴き声にびっくりして尻もちをつく)

ヒリヒリヒリ (お尻が痛い様子)

ひょこひょこひょこ (痛いお尻のまま歩いている様子)

ぐぅ~ (お腹の鳴る音)

ボーンボーンボーン (時計の音)

スタスタスタスタ (食べ物をとりに行く音)

スットン (椅子に座る音)

カラカラカラ (固形の食べ物をお皿にうつす音)

ピンポーン (玄関の呼び鈴)

タッタッタッタッ (走っている音)

ガチャ (ドアを開ける音)

コケー! (ドアを開けるとにわとりがいる)

ドタドタ (走って逃げる)

コケーッ! (にわとりが鳴きながら追いかける)

ドタドタドタ (走って逃げる)

コケコッ (さらににわとりが鳴きながら追いかける)

キキーッ! (止まる)

ドッシーン (ぶつかる)

ガラガラガラガッシャン (物が落ちてくる)

ペッポコピーのペンペン (歌の登場人物がこの音に合わせて踊る)

 

難聴児の療育では、(特に初期に)オノマトペをたくさんお話し、聴かせてあげるよう指導を受けている(受けた)親御さんが多いのではないかと思います。オノマトペはいろいろな音やリズム(音の長短・高低など)を聴く機会となりますし、リズミカルで楽しく、繰り返しの多いオノマトペは小さいお子さんにとって真似しやすいのです。初期にたくさんオノマトペを聴いて、真似することを積み重ねておくことで、新しい音の獲得や発音の定着につながりやすくなります。

 

オノマトペは、動物の鳴き声や乗り物の音、楽器の音、生活の中での音をあらわすだけでなく、ざらざら」「つるつる」など感触を表現するもの、ギザギザ」「でこぼこ」のように見た目を表現するものもあります。人の状態であっても「(お腹が)ぺこぺこ」、「(疲れて)へとへと」のようにオノマトペを使って表現できます。

 

私たちは、同じやわらかい感触のものであっても、もこもこ」だと羊のようなものを想像し、「ふわふわ」だとひよこのような毛を想像します。

食べ物であっても「つるつる」だと麺類だと分かり、「パリパリ」だと、おせんべいのような固いものを想像するでしょう。

 

同じ馬でも、パッカパッカ」と言えば走る様子ですし、ヒヒーン」と言えば馬の鳴き声です。「馬ってどんなふうに走るの?」「どんなふうに鳴くの?」といった質問に答えることもオノマトペを熟知していないと答えることが難しくなるのです。

 

年齢の低いお子さんは、ワンワン」「ニャーニャー」「ガタンゴトン」など遊びながら、あるいは言葉かけの中でオノマトペを自然に使っていけるけど年齢が高いと難しい…なんて思うかもしれません。

でも、「もうオノマトペは卒業!」なんてことはないのです。ご家庭でもいろいろと工夫し、オノマトペをフル活用してみてください。

 【しゅ~~】     【ごろごろ】 【ゆらゆら】

 

10
2月

発音について

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今回は、発音について、お話します。

「(人工内耳のオペをして)以前より聴こえるようになったのに、どうして発音が自然によくならないのでしょうか…?」という質問をよく受けます。

人工内耳装用が1歳台だったお子さんの中には自然獲得をする例もありますが、難聴の発見が遅かったお子さんオペが遅かったお子さんは、レッスンの中やご家庭で意識的にさまざまな音声を聴かせ、口を動かす遊びを誘う必要があります。

その理由は…聴こえなかった期間が長かったから」なのだと思います。特に難聴の発見が2歳台以降だったお子さんは生後2年間以上、音を聴いていなかったことになります。

 

通常、健聴児は赤ちゃんのときから、「あーあー」とよく声をだし、次第に母音に加え、音のレパートリーが増えていきます。いわゆる喃語です。「あぶぶぶ」のように唇をくっつけて声をだしたり、「んんん」と鼻から声を出したり「くー」と喉声を出したりします。

★「あばば」や「くー」などの声出しは、「ば行」「ぱ行」「か行」など息をためて前に出す、破裂音の獲得へとつながります。
★「じーじー」のように息を出し始め、「ふー」と息を吐くこともできるようになり、シャボン玉や音の鳴る楽器も早い時期から楽しめます。それは、息の音である摩擦音の「さ行」「ざ行」「は行」につながります。

★手遊びなどの中で「あっかんべー」や「れろれろれろ」と舌を動かすことを楽しみ、それが舌を動かす「な行」「た行」「ら行」の獲得へとつながります。

★「んんん」と鼻から声を出すことは「ま行」「な行」の鼻音の獲得へとつながります。

 

赤ちゃんは、初語が出る前に人の声を聞き、それを真似し、さらに自分の声を聞き、周囲が言う音に自分の声を合わせていくことを楽しみ、口や唇、舌をたくさん動かす1~2年間があります。

それがなかった難聴の発見が遅かったお子さんは舌が厚ぼったく、ぼてっとしています。動かしていた期間が少ないからです。
口のしまりが悪いこともあります。時に口があきっぱなしでよだれが長く続くお子さんがいますが、口まわりの筋肉を使っていなかったことが大きく影響しています。よだれがたれているお子さんには、「お口を閉じる」ということをさりげなく誘い、お子さんにハンカチなどを持たせて自分自身がよだれを拭くことにより口を閉じることを意識させていきます。

このようなお子さんとは、く遊び」やにらめっこのような「変顔遊び」をたくさんしてもらいたいものです。親御さんには、補聴機器を付けていないお風呂の時間などを有効に使い、楽しく遊びながら、口周りを動かすこをお薦めしています。(もちろん、補聴機器を装用しているときにもたくさんやってみてください!)

               

また、難聴児は、周囲の声に加え、自分の声をしっかり聴くことも足りていないので、自分の声をしっかり聴いて、相手の声と比べて音を自然に修正していくことが難しいのです。

軽度難聴のお子さんで補聴器を装用していなかったお子さんの中にも正しく発音できない音がありますが、自分が聴こえているように発音しているために生じることでもあります。補聴器を装用し、意識的に音を聴き、自分の声がしっかり聴こえるようになることで自然に発音が治る場合もあります。

もちろん、発音指導が必要なケースも見られますが、まずは、聴こえの確保が大切です。

このようなお子さんが、いろいろな音を効率よく聴くために有効なのが、オノマトペ(擬声語・擬態語)です。オノマトペについては、また次回、お伝えしたいと思います。

 

個人的には、発音指導が必要な場合に、

①音節の意識(言葉の中の音の数…「くま」なら音は2つ、「うさぎ」なら音は3つ)がしっかりしている

②文字への興味が出始めている

③集中力(勉強的なことに対するもの)

ということを考慮するので、4歳児くらいが適正年齢だと思っています。早いお子さんでも3歳児の夏くらいでしょうか・・・。

※それに加え、ある程度、自発的に言える音声言語があるということも必要だと感じます。真似ではなく、きちんと自分で言える言葉(語彙)だからこそ、お話しする中での発音が定着していくのだと思っています。

 

それまでの乳児期から3歳児の前半にかけては、楽しく「吹く遊び」「口周りを動かす遊び」「声遊び」「絵本読み」などでいろいろな声を聴き、真似をすることを誘っていきましょう。そして、家庭の中でたくさんお話しできることを増やしていきましょう。これらが、発音に必ずつながっていきます。