今回は、発音について、お話します。

「(人工内耳のオペをして)以前より聴こえるようになったのに、どうして発音が自然によくならないのでしょうか…?」という質問をよく受けます。

人工内耳装用が1歳台だったお子さんの中には自然獲得をする例もありますが、難聴の発見が遅かったお子さんオペが遅かったお子さんは、レッスンの中やご家庭で意識的にさまざまな音声を聴かせ、口を動かす遊びを誘う必要があります。

その理由は…聴こえなかった期間が長かったから」なのだと思います。特に難聴の発見が2歳台以降だったお子さんは生後2年間以上、音を聴いていなかったことになります。

 

通常、健聴児は赤ちゃんのときから、「あーあー」とよく声をだし、次第に母音に加え、音のレパートリーが増えていきます。いわゆる喃語です。「あぶぶぶ」のように唇をくっつけて声をだしたり、「んんん」と鼻から声を出したり「くー」と喉声を出したりします。

★「あばば」や「くー」などの声出しは、「ば行」「ぱ行」「か行」など息をためて前に出す、破裂音の獲得へとつながります。
★「じーじー」のように息を出し始め、「ふー」と息を吐くこともできるようになり、シャボン玉や音の鳴る楽器も早い時期から楽しめます。それは、息の音である摩擦音の「さ行」「ざ行」「は行」につながります。

★手遊びなどの中で「あっかんべー」や「れろれろれろ」と舌を動かすことを楽しみ、それが舌を動かす「な行」「た行」「ら行」の獲得へとつながります。

★「んんん」と鼻から声を出すことは「ま行」「な行」の鼻音の獲得へとつながります。

 

赤ちゃんは、初語が出る前に人の声を聞き、それを真似し、さらに自分の声を聞き、周囲が言う音に自分の声を合わせていくことを楽しみ、口や唇、舌をたくさん動かす1~2年間があります。

それがなかった難聴の発見が遅かったお子さんは舌が厚ぼったく、ぼてっとしています。動かしていた期間が少ないからです。
口のしまりが悪いこともあります。時に口があきっぱなしでよだれが長く続くお子さんがいますが、口まわりの筋肉を使っていなかったことが大きく影響しています。よだれがたれているお子さんには、「お口を閉じる」ということをさりげなく誘い、お子さんにハンカチなどを持たせて自分自身がよだれを拭くことにより口を閉じることを意識させていきます。

このようなお子さんとは、く遊び」やにらめっこのような「変顔遊び」をたくさんしてもらいたいものです。親御さんには、補聴機器を付けていないお風呂の時間などを有効に使い、楽しく遊びながら、口周りを動かすこをお薦めしています。(もちろん、補聴機器を装用しているときにもたくさんやってみてください!)

               

また、難聴児は、周囲の声に加え、自分の声をしっかり聴くことも足りていないので、自分の声をしっかり聴いて、相手の声と比べて音を自然に修正していくことが難しいのです。

軽度難聴のお子さんで補聴器を装用していなかったお子さんの中にも正しく発音できない音がありますが、自分が聴こえているように発音しているために生じることでもあります。補聴器を装用し、意識的に音を聴き、自分の声がしっかり聴こえるようになることで自然に発音が治る場合もあります。

もちろん、発音指導が必要なケースも見られますが、まずは、聴こえの確保が大切です。

このようなお子さんが、いろいろな音を効率よく聴くために有効なのが、オノマトペ(擬声語・擬態語)です。オノマトペについては、また次回、お伝えしたいと思います。

 

個人的には、発音指導が必要な場合に、

①音節の意識(言葉の中の音の数…「くま」なら音は2つ、「うさぎ」なら音は3つ)がしっかりしている

②文字への興味が出始めている

③集中力(勉強的なことに対するもの)

ということを考慮するので、4歳児くらいが適正年齢だと思っています。早いお子さんでも3歳児の夏くらいでしょうか・・・。

※それに加え、ある程度、自発的に言える音声言語があるということも必要だと感じます。真似ではなく、きちんと自分で言える言葉(語彙)だからこそ、お話しする中での発音が定着していくのだと思っています。

 

それまでの乳児期から3歳児の前半にかけては、楽しく「吹く遊び」「口周りを動かす遊び」「声遊び」「絵本読み」などでいろいろな声を聴き、真似をすることを誘っていきましょう。そして、家庭の中でたくさんお話しできることを増やしていきましょう。これらが、発音に必ずつながっていきます。

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